物価は円の対内価値であり、為替は円の対外価値である 経験に基づく投資の話 その㉑

記憶に定かではないのですが、多分「本石町日記」さんのXだかブログだかにあった言葉です。もの凄くその通りだと思います。勝手にお借りしました。申し訳ありません。

ご存じの通り、観光地はどこもインバウンド(外国人観光客)が目立ちます。これって日本文化の素晴らしさの魅力と同時に、日本の行き届いたサービスの安売りに群れ集ったのだと思っています。円安は日本の労働力の安売りに他なりません。

ちょっと前まで、あれほど忌み嫌った円高は、実は外貨を安く買えるチャンスだったのです。

資源のない国で、加工貿易により輸出で稼いできた国ですから、働けば働くほど(成功すればするほど)輸出代金として得たドルが溜まり、そのドルを売って円を買うから円高になり、円高で手取りが減る分、費用を削り、品質向上を図り、もっと働く、というスパイラルに陥ってきた数十年であったわけです。

たまりかねた企業は外国に工場を移していったわけですが、実は、円高に我慢できなくなったその時こそ「外貨を買う」絶好のチャンスだったわけです。

あれほど欲した円安は、日本の貧困化(対海外で相対的に)でしかなかったと思います。通貨高で滅びた国はありません。ブラジル、メキシコ、ロシア、アルゼンチン、いずれも通貨安で破綻しました。

今、通貨安といえばトルコです。10年前1トルコリラ50円くらいだったのが今は5円以下です。
トルコにはトヨタをはじめ、フォード、いすゞ、ステランティス、現代、メルセデスといった自動車メーカーの工場があり、欧州に向け輸出しています。なので通貨安はウェルカムです。
また、観光立国です。外国人旅行者受入数ランキング(令和2年観光庁)ではフランス、スペイン、米国、中国、イタリア、トルコの順で世界6位の観光大国です。

日本はトルコを目指しているのでしょうか。トルコの2月インフレ率は67%です。

以下は「本石町日記」さんの受け売りの抜粋です。ネットで確認したので間違いありません。筆者なりの見解を加えた文章です。
「アリとキリギリス」の現代寓話です。

日本では労働者はアリのように常に働き、報われる時はない。何故なら通貨安に依存して労働力を安く売る戦略だから。
冬になって飢えたキリギリスが訪ねてきたとき、キリギリスはアリの余りに貧しい生活に驚く、というオチになる。
または、遊んでいるように見えたキリギリスは投資をして稼いでいたので、冬になってもゆったり暮らすことができた、というオチもある。

モノづくり時代に円高を忌み嫌い、通貨は安い方が良い、という思想を変えられなかった弊害が、現在も続いているのではないでしょうか。
金融資産の9割が実質ドル建てになってしまっている筆者には円安ウェルカムではありますけれど。

 

 

最高値更新した日経平均、マンション需要の高まりに思う 投資の話その⑳

日経平均は史上最多値更新で僥倖なことでございます。前回高値の1989年に至る過程、その後の失われた30年を、身体で知る人間としてはなんとも感慨深い・・・ かと思いきや、何だかまったくそんなことは感じていません。あまりに当時の日経平均株価と今の日経平均株価の構成が違うので、別物感しかないのです。外部環境も違いすぎます。

調べてみますと「1989年の日経平均」と「2021年の日経平均」の構成銘柄では、概ね3分の2以上の銘柄が入れ替わっているのだそうです。同時に30年の間に筆者の関心が完全にアメリカに向いてしまったこともありますけれど。

それと日経平均は、もとは単純平均なので値嵩株(株価の高い株)が大きな影響を持ちます。半導体製造装置の東京エレクトロンが上値を更新し続ける中、ウエートは10%に近づいており、指数寄与度が最も高いファーストリテイリングと合わせると約20%。このほか、アドバンテスト約5%、ソフトバンクグループ、KDDI、といった限られた銘柄によって牽引される、米国の影響下の「国内AI指数」の様相になりつつあります。

「円安で株高」と言われます。これに違和感があります。円安で物価高になり、内需が崩壊しているのが現状です。ここのとこ、偉い先生がたや報道は間違っていると思います。実質賃金は22か月連続マイナス、GDPは2期連続マイナス(定義上はリセッション)、内閣支持率はアベノミクス以来の最低値、それなのに日経平均は最高値、・・・なんでやねん。 ・・実感がなくて当たり前です。

外国人にとっては、日本株高によって円安ヘッジのニーズが生まれています。だから円安が加速しています。

円安だから株高になっている、わけではないでしょう。なぜなら。日本経済の輸出依存度は15%前後、過去50年で20%になったことはないのです。輸出依存度が40%前後のドイツ、韓国なら「良い円安(通貨安)」という主張も通るでしょうが、日本は米国同様、内需主導の経済です。その内需が、円安による物価高でダメじゃん、になっているのが現在の日本です。

自民党を含め議員の先生方とそのブレーンは頭が古いかも、です。円安にすれば日本が復活するとか、輸出業が復活するなどと思っている可能性を疑います。

もっとも指数で言ったら、今のアメリカ株だって、ある意味似たようなものです。S&P500という指数は時価総額加重平均なので、単純平均の日経平均よりははるかにマシなはずなのですが、マグニフィセント・セブンと呼ばれる7社が巨大すぎるのです。S&P500全体の3割を占め、残り493社はカヤの外、といった塩梅です。

日本のマンションが過熱しています。県庁所在地公示地価ランキング41位の前橋、前橋初の駅前タワマンが今月出来上がる、と思ったら、その真ん前にもう1本着工します。

南町田駅前のタワマン、ドレッセタワー南町田375戸は完成前に完売です。5000万前後から1億8000万円台です。同じく南町田の東京女学館跡地の大規模マンション、パークビレッジ南町田582戸も完売しました。駅から徒歩15分以上かかると思うのですけれど。

株が上がってマンションが上がって・・ いつかみた光景です。

マンションはコロナで玉不足になり、インフレ・円安、人件費上昇、で値上がりするのはわかります。それを買う人がいます。低金利と外国人が背景です。23区内ならわかります。値上がりした都内マンションでも、同規模の香港のマンションと比べれば4分の1の値段だそうですし、外国人が1棟買いだってするそうですから。

問題と思うのは、それを横目にみて筆者の娘のような中間層が「パークビレッジ、完売だって~」などと悔しそうな声を出すところにあります。南町田というところはショッピングモールあり、東名インターに近く、さらに三菱地所の大規模テーマパークも近隣に計画されているという場所ではあります。しかし駅から遠い中古マンションは値下がりするのは必定、と思うわけです。

筆者の、地価をめぐる違和感の理由を探してみました。すると。内閣府が2月15日に発表した 2023年10~12月期四半期別GDP速報 (1次速報値)の中、国内需要の中の「民間住宅」がマイナス4.0%なのです。あ~、これか、と思いました。都内中間層はもとより、地方都市に至るまで不動産価格バブルが波及しているのに対して、民間住宅需要全体は不調であることを示しています。低金利といえど、実質賃金はずっとマイナスで、値段は高騰、ですもの、全体としてはマイナスとなるのが自然だと思います。

幼児のいる娘には「駅から遠いマンションは値下がりするよ、待っときな」と伝えています。