経験に基づく投資の話 その㉓ 2024年8月月初の世界株価暴落 Ⅰ)何があったのか 

日経平均は、1987年のブラックマンデーを超える下げ幅を記録しました。ブラックマンデーをその時、現場で知る者として、当時の記憶と現在を比べてみたいと思います。

 

 

8月1日日経平均は975円安の38,126円となりました。円ドルが148円台に円高になったのが原因です。

その前日7月31日、日銀植田総裁は0.25%への利上げを発表しました。2016年1月マイナス金利スタート以来の「金利ある世界」が始まるのです。さらに引き続き金利を上げる可能性も示しました。

日本株の上昇要因のほどんどは今も昔も「円安」です。日本がついに利上げし、さらに上げる方向となると、日米金利差が縮小するということです。ましてアメリカは反対方向の「利下げ」が期待されているのです。株式市場では。

植田総裁タカ派転換をみて、筆者は「こりゃ相当、ヤバいんじゃね?」と思いました。日本の利上げこそが、ここ数年の世界株高に対する心配事項のイの一番だと思っていたのです。

何が正しいかなんてわからないのですが、筆者としては、去年の暮あたりから少~しっつ、リークもしつつ、株安の痛みに耐えつつ、引き締めへの階段を1㎝ずつ登るべきだったと思うのです。米国との対比で、今となっては遅すぎました。

たぶん世界株高を支えている「円キャリートレード」の終焉、unwind、巻き戻し、つまり「金利ゼロで円を借りてドルを買う、米国株を買う、日本株を買う(ウォーレン・バフェットのように)」という仕組みが逆回転することになるのです。

ゼロ金利解除は、借金返済のために世界の株・投資案件を売却・換金し、得た外貨を円に換える(=円高になる)ことになるのです。

(筆者の個人資産はたまたま6月24日、NVDAが高値を付けた2日後、グラリときた日にNVDAを含めAIがらみ銘柄はすべて「頭とシッポはくれてやれ」とばかりに売却していたのです。結果、これは幸いでした。でもドルのままにしておいたのは残念でした。現在ガチホにしているのは、防衛、薬、資源、インドETF積立などのディフェンシブです。今回の下げで評価額は減りましたけど。例外として、ハイテクで持っているのは、何年も前に買ったTSLAとSMHだけです)

7月31日植田総裁会見の当日夜、米国ではFOMC(連邦公開市場委員会)が行われ、パウエル議長は「9月にも利下げ」と発言しました。FFレート(米政策金利)先物は8月2日には、次回9月24日FOMCでの0.5%利下げ確率は73.5%に達しました。通常は0.25%ずつなので、大幅です。米国はbehind the curve(後手に回る)だと思われます。

8月1日、NASDAQは円キャリートレード解消の影響があったかは不明ですが、405ポイント安(2.3%安)、雇用統計が悪くてガッカリした8月2日は417ポイント安(2.4%安)、週明け8月5日は576ポイント安(3.4%安)の急落でした。金利が下がるのは、株価にはプラス要因なのですけれど。

これは金利を大幅に下げねばならないほど、景気が悪化する見込みであることを嫌気したと思われます。

リセッション(景気後退)のときの株価推移は、SP500指数でみると、1990年湾岸危機のとき-20%、2001年ITバブル崩壊のとき-26%、2008年リーマンショック時-55%、2020年コロナショック時-34%でした。これだけの下落実績なら「リセッションかも」って言われれば「株は売っておこう」になりますね。

米株安を受けてなのか、日本が震源地だからなのか、わかりませんが、日経平均はFOMC結果と植田会見によりまして、8月1日-975円(2.4%安)、8月2日-2,216円(5.8%安)、明けて8月5日-4,451円(12.3%安)という大幅ヤンチャぶりでした。

相当、信用取引で投げが投げを呼んだと思います。バブルの頃と信用取引のルールが変わっています。ネット取引がほとんどですから、証券会社は顧客の面倒は見ない、リスクを取らない、つまり強制決済が即、待っている、追証(追加保証金)を入れても維持率は回復しづらい仕組みなので、ズコバコ強制決済が次々なされる(売却が出る)わけです。

さてここで、今回の世界的ガラ(暴落)の理由を整理してみます。

①7月31日の日銀の利上げ  これから始まりました。国債買い入れの縮小だけでなく、ほんとに0.25利上げしちゃった!(サプライズ!) 日銀は財務省指示で実弾為替介入もしちゃったことだし、「円安によるインフレ」が気になってしかたなかったのでしょう。

②円キャリートレードの巻戻し  これがどれほどの規模で行われていたのかは不明です。 UBSのマルコム氏によればピーク時に少なくとも5000億ドル(70兆円)だそうです。人によっては4兆ドル!(600兆円)と云う人もいます。これは世界の株価のみならず、いろんな投資案件に、相当ショックが走るはずだと思います。

③8月2日の米雇用統計 といっても失業率が4.3%です。筆者の知る限り、歴史的に決して高い水準ではない、どころか十分に低い水準だと思います。金利が5.25%でインフレが3.0%にコントロールされている経済です。すごく良い経済状態だと思うんだけどな~。政策対応余地はいっぱいありますよね。
もちろん株価も、経済政策も「先を見る」ものですから4.3%でも「悪い数字」なんですけどね。 パウエルさんの本音は「こんなことなら7月に利下げ、しとけばよかった」でしょうね。

どうも今回のガラ(暴落)の命名は「日銀ショック」で良いかもしれません。

長くなりました。ブラックマンデーの記憶や経験則、今回の局面の見通しについては次回、といたします。

Ⅱ)投資戦略 につづく

 

※このページに書かれた数値、内容等については、筆者ヘンデルの調べであり、意見です。記載する内容は出来るだけ正確なソースに基づくよう心掛けていますが、未確認の内容を含む場合があります。ここに記載された情報を参考に金融商品などの投資を行った場合、その結果は自己責任です。

 

 

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