ある文集に投降した原稿を掲載しています。
~ 驚くほどアメリケーンな沖縄
平日朝八時、国際通りのマクドナルドはオジーとオバーでいっぱいです。オジーもオバーも百円コーヒーとハンバーガーが大好きです。
(そんなことだから長寿県で知られた沖縄が、今じゃ女性は七位、男性に至っては三十六位になっちゃったんだと思います)
A&W(エイアンドダブリュー) 沖縄だけのハンバーガーチェーン店です。私はMから始まるハンバーガーは好みでないのですが、A&Wは大好きです。ちょっと高いけど。 右は看板メニューのルートビアです。(ジュースです)
現地のひとは「エンダー」と呼びます。米国人風に発音してください。
エイ エンド ダブリューです。
ロードサイドのA&Wは「ドライブイン」です。 「ドライブスルー」ではありません。クルマに乗ったままメニューを見て、マイクで注文すると、クルマまで持ってきてくれるのです。
具志堅用高さんは「ご注文をどうぞ」とマイクで言われて「う~んと、これと、これね」と指さしました。
店員さん 「名前を言ってください」
具志堅用高さん 「具志堅ヨウコウです!」
普天間のベース近くの喫茶店は「コーヒーシャープ」です。米兵のしゃべる「コーヒーショップ」は「シャープ」に聞こえたのでしょう。
海辺でのバーベキューはビーチパーリーです。パーティーではありません。これは皆、普通に「パーリー」と言うし、書きます。
沖縄の、牛乳やジュースの入った縦長の紙パック容器は1リットルではありません。ちょっと短いのです。946㎖です。クォーターガロン(1/4ガロン)なんです。
私の職場で、昼食から帰った若い女性が同僚に 「ねぇ、コルゲート貸して」
・・・・・これがわかる人は一定以上の年齢の方ですね。
同じく会社の若い人が、オバーから「スコッティ買ってこい」と言われて・・・
「なんでスコッティなのよ、ティッシュなんてなんでもいいじゃない」 と思いつつもスコッティティッシュをぶらさげて帰ると、オバーに
「なんでこんな高いの買ってくるんだ、ネピアでいいんだ」 と怒られ、逆ギレした・・・ 実話です。
歯磨き粉といえばコルゲートだし、ティッシュと言えばスコットペーパー、ガソリンスタンドと言えばカルテックスなんです。沖縄では。
アメリカ世(ゆ)
私は沖縄のことを「日本語の通じる外国」だと思っています。
ほんの146年前、明治政府による琉球処分まで、琉球王国だったのです。
唐ぬ世(とぅぬゆ)から大和ぬ世(やまとぅぬゆ)、大和ぬ世(やまとぅぬゆ)からアメリカ世(ゆ)
そして40年前の日本復帰で、また日本の世です。
薩摩から過酷な支配を受けつつも、明・清との関係と王制を保ち、ペリーが来れば見事な外交術で江戸にやり過ごすなど、400年にわたって小国なりの生き残りを果たしてきました。
鎧兜は日本式で、官服は中国風。
北前船は琉球まで来ていました。北海道の昆布を琉球から中国に輸出していたのです。中国からは漢方薬を輸入して、富山に運びました。
琉球は明、清はもちろん、シャム(タイ)やマラッカ(マレーシアあたり)まで貿易をしていました。
外交力があり、いろんな文化に寛容で、柔軟で、粘り強い琉球民族に、私は尊敬の念を持っています。
~ウチナンチュ(沖縄の人)は肉が好き~
中国が近いですから、豚肉大好き。声以外は全部食べるってくらいです。
耳も(ミミガー)顔も(チラガー)足も(テビチ)つま先も(チマグー)、いただきます。
豚の丸焼きを皆で食したときには脳みそまでいただきました。(子豚1頭3万5千円でした) 出汁を取るため、骨も皆が持って帰って、あとには何も残りませんでした…。
鳥のから揚げが大好きです。ケンタが宮古島にできたとき、「一店舗売上げが当時日本一になった」と宮古島出身者が自慢げに語ってました。(ウラは取っておりませぬ) 家飲みではケンタが大活躍です。 ブエノチキンという地元ロースト屋チェーンも大人気です。
ホントは牛も好きなんですけど、予算の都合でそんなに食べられないのです。 (多分・・・ )
当然、赤身のアメリカンステーキです。有名老舗店は西町のジャッキーステーキです。
それにヤギ(現地名:ヒージャー)が好きな人は、大々の大好きです。安里の老舗「二十番」のお料理です。
でも匂いがキツイので、ウチナンチュでもダメな人はいます。山羊汁、刺身(皮付き!)でいただきます。
ついでに ラーメン不毛の地
ウチナンチュは沖縄そば(すば)が大好きです。東京にラーメン屋と蕎麦屋があちこちにあるように、沖縄そば屋があります。
おデブの私はもちろんコテコテのラーメン好きなのですが、ラーメン屋探しは3カ月であきらめたのでありました。
沖縄そばは以前、そば粉を使ってないという理由で「そばではない」と言われていたそうです。
この写真は「だるま屋」さんの「宮古そば」です。
具が麺の下に隠れています。酷税に苦しんだ宮古島では、貧しさをアピールするために具を隠したと云われています。
具が麺の下に隠れています。酷税に苦しんだ宮古島では、貧しさをアピールするために具を隠したと云われています。
もひとつオマケ
~「ん」から始まる食べ物 ~
その1 もっとも一般的な「ん」から始まる食べ物は「ンブシー」です。 「ナーベラーンブシー」はウチナンチュなら誰でも分かります。「ナーベラー」はヘチマ、「ンブシー」とは味噌煮です。パパイヤ、菜っ葉もンブシーにします。島豆腐、油揚げなどの他の具材と油で炒めてから、出し汁と味噌でしばらく煮込みます。お店によって出来上がりは様々です。 写真は波浮食堂さんのものです。
その2 「ンジャナ」(苦菜)です。 右の写真は久高島の、2つしかない食堂の1つの「ンジャナ定食」です。 ンジャナのお浸しに、魚の切り身が混じっています。 ・・・体に良さそうな味がしました。
その3 「ンム」 芋 です。「ウム」と表記することが多いです。田芋と書いて、「ターンム」(サトイモに近い)と呼びます。写真は僕のおススメ、首里の富久屋さんの「ンムクジプットゥルー」です。 ンム=イモ、クジ=クズ、プットゥルー=トロトロ・ネバネバ です。これもお店によって、相当違います。トロミの強いスープのようなプットゥルーもあります。
その4 「ンナシルー」 汁物です。文献によると、昔、貧しくて、具なしの汁のことをンナシルーと呼んだ、と読んだことがあります。
ウチナンチュ(沖縄の人)は、シリトリ遊びは「ん」で終わってはいけない、そういうルールの遊びなんだ、と思っているのです。(正しくは、思っている人もいる、です)
<続く>