経験に基づく投資の話 その⑨ 欧米の銀行の不安について まとめメモと投資方針

今回の欧米銀行のバタバタについて、筆者が満足・納得できる、まとめた文章、ブログがいま一つ見当たらず、自分で作成することにしました。従いまして、本日時点の筆者用メモです。なので今回は難解です。筆者の事実誤認の恐れがあり、また今後想定外が出現する可能性もあります。

シルバーゲート・キャピタル(SI) 3月8日、清算すると声明。クリプト(仮想通貨)の作業代行をしていた。仮想通貨取引所FTXの破綻と同時に預金の引出しが起きた。資金流出に対応する資産売却で損失が膨らみ、自己資本比率が規制の水準を満たさない可能性が出た。

シリコンバレーバンク(SVB) 3月10日取付騒ぎが起きた。大手行は相手にしないようなスタートアップ企業で口座を作る。ベンチャーキャピタル(VC)から投資されたら、それを目当てに融資する。預金は長期国債で運用していたが、金利上昇で18億ドルを損失計上し、自己資本強化のためゴールドマンサックス(GS)で増資すると発表した。それが信用不安を招き、取付騒ぎとなった。 

シグネチャーバンク(SBNY) クリプトの作業代行。3月12日事業停止命令。FTX破綻、SI、SVB破綻をみて同行にも信用不安が走った。FDIC(Federal Deposit Insurance Corporation:連邦預金保険公社)管理下におかれる。マンハッタン商業用不動産の融資の10%シェアを持つ。

●IPOウインドウが閉じている現在、プライベートエイクティ(PE)やベンチャーキャピタル(VC)は商売あがったりになっています。

●ダイレクト・リスティング(上場にあたり引受証券会社をおかず、直接、既存株主が市場で売却する仕組み。スラック、スポティファイなど)、SPAC(未公開企業と合併するための事業実体を持たない上場会社。Special Purpose Acquisition Company)などが、もうボロボロです。金利上昇だから。シリコンバレーの時代は終わりました。

こんな環境ではSVBは生きていけません。取引先であるアントンプレナーはIPOができない、金利上昇でダイレクトリスティングもSPACも止まっている・・それを肌で知っているのがスタートアップのCEOたち。だから彼らが真っ先に預金の引出しに走ったわけですね。

ファースト・リパブリック・バンク(FRC) 3月15日S&Pは格付けをBB+ネガティブ(ジャンク級)に引き下げた。16日にはJPM(JPモルガン)、C(シティ)などが300億ドル(4兆円)預金した。そりゃそうで、SVBやFRCから逃げだしたお金がJPM、BAC(バンカメ)、Cに駆け込んでいる。だからJPMなどにはお金が唸っている。コンソーシアムを組んで還流させる。 ザッカーバークの住宅ローンを融資したのはFRCとも。

クレディ・スイス(CS) 旧スイス三大銀行で1番だった。他の2行、UBS(Union Bank of Switzerland )とスイス銀行コーポレーション(SBC)が合併して現UBSとなり、こちらが最大手になった。今回はスイス中央銀行が音頭を取ってCSはUBSと合併へ。預金1000億ドルが流出したといわれる。アリババの主幹事にもなったCSだが中国ブームが終わり、IPOも崩壊。アルケゴスでも44億スイスフラン(5,200億円)の損失を発表している。

●アメリカの地銀で起きている不安とクレディ・スイスは関係がありません。アメリカでは金利上昇を背景にPE,IPO、SPAC,ダイレクトリスティングが崩壊して、次々と銀行破綻を起こしました。まだまだ破綻が出てくる可能性があります。(ゴキの1匹、とは言わないけれど)

●CSの買収話に待った!をしたのがAT1債のホルダーです。AT1債とはAdditional Tier1債券の略称です。偶発転換社債(contingent convertible bonds:CoCo債)とも呼ばれます。リーマン後に、普通株式を出せないような銀行が発行しました。株価が安いと、増資するともっと値下がりします。それは既存株主が許しません。でも永久債って返さなくていいんだから株と同じじゃね?ということで、これ、「みなし株式」でいんじゃね? となり、だけど潰れたときは株と同じで無価値になっちゃうよ、てことです。無価値にならないと、ティア1とは見做されません。ハイリスクだから、「10年物米国債の利回りは現在約3.58%だが、クレディ・スイスのAT1債の表面利率は9.75%」(3/24 BUSINSS INSIDER)

CSの株主はわずかなりともUBSの株をもらえるのに、AT1債はゼロになる、だから文句が出ています。 ・・・高い金利をもらってきたくせに。

 

筆者は、リーマンショック後、アメリカの銀行はCBOなどの不良債権を整理したと思っています。しかし当時から、UBSやCSなどを始めとした欧州の銀行は体力がなさすぎて、整理することができていないと聞いて(思って)いました。筆者の知るところでは一部日本の未上場金融機関も整理しきれなかったのではないか、と認識しています。

クレディスイスでは、バーゼル3(リーマンショック後の、銀行の3回目の国際的自己資本規制比率)を満たすためにAT1債を発行し、ブルームバーグ報道では香港やシンガポールの富裕層が積極的に購入したそうです。

これがゼロになるわけで、保有者探しはもちろんのこと、そもそも発行しているような危ない金融機関はどこか? そりゃ信用問題だ、ということが話題になっているのです。

●ドイチェ銀行、コメルツ銀行、ソシエテ・ジェネラル、他、の健全性が疑われ、株価が下りました。でも、そもそもAT1債の値段がどんなに下がっても、発行元の銀行経営には関係はありません。何故なら、もうお金はティア1として当該銀行に組み入れられているのですから。

ということで筆者の投資方針は、年末にかけてのドル安円高を見込み、個別ハイテクと中国資本関連は避け、リセッションまたはインフレにも強い景気ディフェンシブ株(薬、防衛、資源、食品)ということで変わりありません。

今回の銀行不安で焼け太りになったJPMとかBAC、Cは買い付けを検討します。下がったところだし。筆者の銘柄選びの性癖「やっぱNo.1企業でしょ!」からすると、最大手のJPMが候補です。

今回はサンフランシスコとマンハッタンのお金持ちローカルな問題だけれど、利上げ局面終了が確信できると思うので、もうしばらく全体に上がると思います。けれど、5月3日FOMCでもう一回利上げして、パウエルがインフレつぶしの意志の強さを見せて、年内くらい金利は高止まり、を期待しています。もうすぐ利下げだ、という期待を抱かせつつ。もっともFedWatch Toolでは5月据え置き予想が88.2%!です。

一方、Fedのバランスシートは急増(世間のお金の量が増加)しています。金融不安だから仕方ないんですけど。でも、ここで利下げだとかなったら、インフレに逆戻りするのではないかと懸念しています。 だから5月はもう一回、利上げをして欲しいと思っているのです。

ということは Sell in May かもしれませんね。 ディフェンシブは持ってていいと思いますけど。

 

※このページに書かれた数値、内容等については、筆者ヘンデルの調べであり、意見です。記載する内容は出来るだけ正確なソースに基づくよう心掛けていますが、未確認の内容を含む場合があります。ここに記載された情報を参考に金融商品などの投資を行った場合、その結果は自己責任です。